大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

山形地方裁判所 昭和48年(わ)175号 判決 1974年7月30日

主文

被告人を懲役一年四月に処する。

訴訟費用は、全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告入は、

第一、自動車運転の業務に従事する者であるが、昭和四八年一二月一日午後九時四〇分頃、普通乗用自動車(山形五五つ五〇五五号)を運転し、山形市円応寺町二番一五号付近道路を薬師町十字路方面から馬見ヶ崎堤防方面に向かい時速約六〇キロメートルの速度で北進するにあたり、同所付近道路は山形県公安委員会が道路標識により最高速度を時速四〇キロメートルと制限した区間であり、かつ、北方へ緩やかな右曲がりになつているところであるから、被告人としてはこのような場所を進行するにあたつては、前方注視を確実にし、且つ、制限速度以下に減速し、不測の事故を防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、ウイスキーに酔つていることもあつて、前方注視不十分のまま前記速度で漫然進行した過失により、折柄左側を対面歩行してきた矢萩鎌雄(当時三六年)に気づかず、前記速度では前記場所を右方に進路を変えることができないので、急制動を講じて後部を横ぶれさせたため、自車助手席扉を同人に激突はね飛ばし、よつて、同人に対し左肋骨多発性骨折の傷害を与え、同月二日午前五時三〇分、山形市薬師町一丁目一番五一号菊地外科医院において、脾臓破裂による失血により同人を死亡するに至らしめ、

第二、前記日時場所において、前記自動車を運転中、前記交通事故を起こし、前記矢萩鎌雄に前記傷害を与えたのに、直ちに自車の運転を中止して同人を救護する等法律の定める必要な措置を講じないでそのまま逃走し、

第三、前記日時場所において、前記自動車を運転中、前記交通事故を起こし、前記矢萩鎌雄に前記傷害を与えたのに、その事故発生の日時場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しないで、そのまま逃走し

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

判示第一の所為につき

刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号

同第二の所為につき

道路交通法七二条一項前段、一一七条

同第三の所為につき

同法七二条一項後段、一一九条一項一〇号

右判示第二、第三の所為は、一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから

刑法五四条一項前段、一〇条(重い判示第二の罪の刑で処断)

これと、判示第一の所為とは、併合罪であるから、各罪につきいずれも懲役刑を選択の上

同法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も重い判示第一の業務上過失致死罪の刑に法定の加重)

訴訟費用の負担につき

刑事訴訟法一八一条一項本文

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例